レセプト再審査請求のやり方|対象・提出先・必要書類・結果を解説
2026年8月22日 ・ 下地
査定に納得できなくても、対象レセプト全件を再審査請求するわけではありません。再審査請求をする際は増減点通知書、対象レセプト、カルテと算定根拠を照合し、次に再審査、取下げ、返戻後再請求を振り分けます。実務上に必要な再審査請求の提出先から再審査結果の対応まで確認できます。
【結論】増減点通知書を受け取ったら最初にすること
増減点通知書を受け取ったら、次の3段階で処理します。
- 照合する:通知書の診療年月、対象項目、増減点、理由を、レセプトやカルテと照合します。
- 手続きを判定する:審査結果への異議なら再審査請求です。請求済みレセプトを医療機関側の理由で戻すなら対象レセプトの取下げ、返戻なら対象レセプトを修正し再請求を検討します。
- 期限と提出先を確認する:実際の請求先、請求媒体、添付資料の必要性を確認します。様式や締切は提出先の最新案内に従います。
レセプト再審査請求とは| 再審査の対象・見送り・手続きの違い
査定・減点に異議がある場合が再審査の対象
レセプトの再審査請求とは、審査結果に異議がある医療機関等が、審査支払機関へ再検討を求める手続きです。単に請求内容を直すための手続きではありません。
支払基金の審査は、療養担当規則、診療報酬点数表、関連通知、医薬品の承認内容などを基礎とし、医学的見地も含めて審査されます。したがって、再審査理由も「納得できない」という理由では足りません。どの要件がカルテ内にある事実と点数表や通知、疑義解釈等の根拠を示す必要があります。支払基金の審査に関するQ&Aも確認しましょう。
同一事項の再度の申立(再々審査)は、特別の事情がない限り認められないとされています。特別の事情とは、後日判明した検査・病理結果や、新たに確認できた強い医学的根拠がある場合です。ただし、これは全国共通の判定基準ではありません。医師とレセプトの提出先へ個別に照会する必要があります。
再審査請求ができるケース・見送るケース
再審査を検討する基準は、金額ではなく根拠の有無です。
| 検討しやすいケース | 見送りを検討するケース |
|---|---|
| カルテに請求時点の病態・所見がある | 算定要件を満たしていない |
| 査定項目と算定根拠が対応する | 必要な診療記録がない |
| 医学的必要性を医師が説明できる | 後から事実を補わないと説明できない |
| 必要なコメントが別資料で確認できる | 査定理由への反論が感情論にとどまる |
病名漏れやコメント漏れは、一律に再審査できるとも、できないともいえません。たとえば大阪府国保連は、審査結果に関連する病名漏れを再審査として案内しています。通知の種類、請求時点の記録、提出先の運用を確認しましょう。大阪府国保連の案内は大阪府の運用であり、全国共通ではありません。各都道府県の国保連合会のHPで確認する必要があります。
医事担当者は、保険資格、併算定、回数、間隔、摘要欄を確認・修正できます。一方、検査や投薬の妥当性、病態、医学的必要性は医師が判断します。境界が曖昧な案件は、医事担当者だけで結論を出さず、医事責任者や医師に確認しましょう。
再審査請求・取下げ・返戻後再請求の違い
- 再審査請求査定・減点の通知審査結果の再検討根拠を示して申し出る
- 取下げ請求後に誤り等へ気づく審査前後のレセプトを戻す当月・過月と提出先を確認
- 返戻後再請求審査支払機関から返戻返戻理由を解消して再提出修正後に月次請求へ含める
査定結果が出た項目への異議は、取下げで処理するものではありません。一方、審査結果と無関係な資格・記載の訂正は取下げを検討します。返戻の場合、返戻理由を解消して再請求します。詳しくはレセプト返戻後の再請求のやり方も参照してください。
増減点通知書を受け取ったらまず確認すること
通知書で対象レセプト・査定箇所・理由を確認する
次の順に確認します。
- 増減点通知書診療年月、対象、調整項目、点数、理由通知書の見方を確認
- 対象レセプト算定項目、病名、回数、摘要欄レセコンと請求時データを照合
- カルテ病態、所見、経過、実施理由医学的内容は医師へ確認
- 根拠資料点数表、告示、通知、承認内容適用時期と版を記録
実務者の体感値では無床診療所の査定件数が5件程度の場合、習熟者1名が原因を特定するまで約10〜30分程度、医師への報告と仕分けにかかる時間は約5〜10分程度でした。
この数値は全国的な標準工数ではなく、査定内容や担当者の実務経験で変わります。
カルテ・算定根拠と照合して再審査の可否を検討する
まず査定理由の仮説を立てます。次に、過去の返戻査定患者台帳、カルテ、レセプト、点数表、告示・通知の順で確かめます。支払基金の審査情報提供事例は参考になりますが、対象レセプトを機械的に当てはめないでください。
事務側の入力や併算定の確認は医事担当者が修正します。病態や検査・投薬の必要性は医師へ確認し、処理します。カルテが簡潔で判断できない場合も、推測で医学的理由を作らず医師へ戻しましょう。
院内の担当者・管理期限・記録方法を決める
返戻査定患者台帳には、患者ID(患者番号)、通知書確認日、査定項目、査定理由、修正担当者、医師確認日、判断(返戻後再請求・取下げ・再審査・見送り)、提出先、提出日、添付資料の有無、受付確認、審査結果、改善策を記録します。患者情報を含む台帳は、院内規程に従ってアクセスを制限してください。
提出期限ぎりぎりを院内期限にしないことも大切です。通知を確認した日に担当者を決め、医師への確認日と提出予定日を置きます。実際の現場では「次月まで残った案件は医師へ再度声をかける」という運用例もありました。
レセプト再審査請求のやり方|提出までの5ステップ
1. 査定理由と再審査の根拠を確認する
通知書の査定項目と査定理由を特定します。次に、診療報酬点数表、留意事項通知、施設基準、医薬品・医療機器の承認内容を確認しましょう。カルテ内で患者の症状、医師所見、治療経過、評価については医師が確認します。根拠資料の版、適用日、参照箇所も控えておくとスムーズです。
2. 提出先は支払基金と国保連合会のどちらか
提出先は、対象レセプトを実際に請求した審査支払機関で確認します。社会保険に加入している患者や単独で公費負担医療制度を利用している受給者は支払基金(社保)へ、国保加入者・75歳以上の後期高齢者医療は原則として都道府県国保連合会(国保)が窓口です。保険名称だけで決めないでください。公費負担医療制度とは基本的に国が医療費を負担するため患者には医療費負担がありません。実務上よく見かけるのが、生活保護医療券の頭番号「12」、難病医療支援の「54」、B型、C型肝炎治療についても「38」が適用になります。ただし、単独で使用する場合となりますので社会保険や国保連に加入しながら受給している場合(併用)は提出先に注意が必要です。
国保連の様式、提出期限、関係資料添付方法には地域差があります。たとえば東京都国保連と福岡県国保連で案内が異なります。詳しくは自院所在地の公式ページを使ってください。
3. 再審査理由と添付資料を準備する
理由欄は、次の順で組み立てると明確になります。
- 査定された項目と査定理由
- 該当する算定要件
- 請求時点で記録された患者の病態や事実
- 医師が判断した医学的必要性
- どの要件を満たすために再審査を求めるか
感情的な表現や「必要だったため」だけの簡単な説明は避けます。直近の検査値、治療経過、画像診断など、根拠を裏づける資料だけを必要最小限で用意します。関係資料添付の必要性や患者情報は提出先へ確認し、独自判断で過度に隠蔽しないでください。
4. 紙とオンラインの違いを確認して提出する
| 提出条件 | 支払基金 | 国保連合会 |
|---|---|---|
| オンライン請求機関 | 原則オンライン | 都道府県の案内を確認 |
| 添付資料あり | 郵送 | 地域により本体オンライン+別紙郵送等(要確認) |
| 電子媒体・紙請求 | 患者ごとにレセプトをまとめて郵送 | 最新様式と提出方法を確認 |
| 訪問看護 | 紙媒体で郵送 | 提出先の案内を確認 |
支払基金のオンラインレセプト請求提出は、公式ツールか対応レセコン上でファイルを作成し、オンライン請求システムから送信します。添付資料がある場合やオンライン提出が困難な場合は郵送です。紙媒体では対象患者ごとにレセプトを作成し、まとめてFAXではなく郵送します。最新様式は支払基金の様式ページから取得してください。
紙提出では対象レセプトの他に請求書と添付資料一式の控えを残しておきます。現場では、追跡できる送付方法(書留等)を使い、宛先をダブルチェックしていました。ただし、指定された送付方法がある場合は公式案内を優先します。
5. 送信・提出後の控えと処理状況を確認する
レセプトオンライン請求は、ファイル送信だけで完了と判断しないようにしましょう。受付結果とエラーの有無を確認し、受付記録を保存します。支払基金は操作手順書と関連資料を公開しているので参考にしてください。
紙媒体でのレセプトは郵送になるため、提出日、送付先、追跡番号、送付物の控えを台帳に記録します。関係機関に問い合わせた場合は日時、相談窓口、回答についても記録します。最後に、周知に共有する役割も含めて結果を誰がいつ確認するかを決めておきましょう。
6.受付事務点検ASPエラーとは
レセプトオンライン請求中に受付事務点検ASPエラーになることがあります。オンライン請求システムでは画面上に「受付不能」「要確認」の2種類で表示されます。このような場合、どのように対応する必要があるのかエラーコードを確認し修正しましょう。(受付・事務点検ASPに係るチェック一覧(医科))
レセプト電算処理システムにおけるエラーコードの分類と対応区分を分かりやすく表にまとめました。レセプトエラーについては以下の5つです。
| エラーコード帯 | 分類名 | エラーの単位 | 対応・処理区分 | 詳細・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1000番台 | L1エラー | 医療機関単位 | 再請求が必要 | 医療機関単位でエラーが発生しているもの |
| 2000番台 | L2エラー | レセプト単位 | 再請求が必要 | レセプト単位でエラーが発生しているもの |
| 3000番台 | L3エラー | レセプト内 | 要確認(返戻) | レセプト内でエラーが確認され、返戻となる要確認レセプト |
| 4000番台(※4800番台を除く) | L4エラー | レセプト内 | 要確認(査定・返戻・正当のいずれか) | レセプト内でエラーが確認され、査定、返戻、または正当となる要確認レセプト |
| 4800番台 | L48エラー | - | 再請求が不要 | エラーとして連絡されるが、正常分として処理されるもの |
1000番台~3000番台まではレセプト修正が必要になります。特に3000番台は修正しなければ確実に返戻となってかえってきます。4000番台はレセプト内容を確認して請求、4800番台はエラーコードとして表示されていますが、そのまま請求できます。エラーとして表示されていると修正しないと請求できないと思われますが、通知内容を最後までよく読んでから請求を確定してください。さらに支払基金ではASPエラーに関するQ&Aがあります。ぜひ参考にしてください。
一例として毎年8月になると70歳以上の負担割合や区分の入力が合わず、レセプトの特記事項に誤りがあるケースが目立ちます。返戻にならないためにも送信前に確認しましょう。
再審査結果の見方とその後の対応
原審通り・一部復活・復活の意味
通知書の正式な文言とコードを優先します。実務上は次の3区分で整理できます。
| 実務上の呼び方 | 意味 | 受領後の確認 |
|---|---|---|
| 原審どおり | 当初の査定結果が維持された | 維持理由、点数、会計反映 |
| 一部復活 | 申出の一部が認められた | 認められた項目と残った査定 |
| 復活 | 申出が認められた | 復活項目、点数、支払反映 |
どの結果でも、対象レセプト、項目、点数・金額を照合します。患者自己負担に影響する場合がありますが、返金義務、時期、方法は一律ではありません。厚生労働省の通知例も対象制度が限定されています。通知内容を確認し、保険者、会計責任者、必要に応じて自院の医師へ確認してください。
【事例】再審査するケースと見送るケース
復活した例
ある無床内科診療所では、胃潰瘍の再発抑制目的で処方した薬剤が、病名無しとして査定されました。請求時の処方箋には必要なコメントがありましたが、レセコンの入力不備でレセプトに反映されていませんでした。医師確認後、当時の記載を確認できる調剤済み処方箋の写しを根拠として申し出たところ、復活しました。
この事例のポイントは、査定後に理由を作ったのではないことです。請求時点の別資料で、患者固有の処方理由を示せました。同様の案件が必ず認められるわけではないため、レセプト提出先である保険者と医師の確認が必要です。
原審どおりだった例
同じ実務現場では、経過観察で行った腫瘍マーカー検査について再審査を申し出ました。前回・今回の検査結果と医師の詳記を提出しましたが、算定要件に対応する傷病名がなく、原審どおりでした。その後は、検査時点の病態、疑い病名、転帰、算定要件を請求前に確認する運用へつなげました。
この例は、医学的必要性の説明だけでは足りない場合を示します。適用時点の点数表・通知と個別事実の双方が必要です。薬剤名、検査名、算定要件は改定されるため、公開前に医師と医療事務実務経験者が再確認してください。
結果を台帳と次月のレセプト点検へ反映する
結果は単発で解決することなく、返戻査定査定台帳へ記録します。医療事務実務者は、保険者へ提出した医学的な説明と関係資料、再審査が認められた理由または認められなかった理由を記録していました。必要に応じて点検マニュアルへ追加しています。
- 原審どおり:不足した要件・記録を確認し、次回の点検項目へ追加する
- 一部復活:認められた範囲と残った査定を分けて記録する
- 復活:有効だった根拠を残し、同様案件の確認手順へ反映する
- 共通:算定マスタ、コメント、院内ルール、医師への共有方法を見直す
再発予防には、査定・返戻を防ぐレセプト点検も役立ちます。
レセプト再審査請求のよくある質問
再審査請求はいつまでに行う?
支払基金は、再審査の申出を原則6か月以内と案内しています。ただし、公開Q&Aには一律の起算点が明記されていません。同一事項の再度申出も原則制限されています。通知受領後すぐに、対象地域の支払基金または国保連へ起算点と受付締切を確認してください。
再審査請求の例文はそのまま使える?
そのまま使うべきではありません。査定項目、算定要件、患者固有の事実、医学的必要性を対応させます。医事担当者が根拠を整理し、医学的記述に関しては医師に確認してください。
病名漏れは再審査と取下げのどちら?
査定結果に関連する病名漏れなら再審査、審査結果と無関係な訂正(レセプト提出後、院内で気づいた場合)なら取下げとなる場合があります。ただし、請求時点の記録や地域運用で判断が変わりるため、増減点通知書とカルテを照合し、提出先へ確認してください。
添付資料がある場合もオンラインで提出できる?
支払基金では、添付資料がある再審査請求は郵送提出です。国保連は、オンライン本体と別紙郵送を組み合わせる地域もあります。この提出方法は全国一律ではないため、所在地の国保連の最新案内を確認してください。
院内対応が難しい場合の選択肢
院内対応・公式照会・外部支援の判断基準
| 課題 | 適した確認・相談先 |
|---|---|
| 患者の病態や医学的必要性 | 担当医師 |
| 様式、期限、提出方法が不明 | 支払基金・国保連の公式窓口 |
| 台帳、点検、期限管理が属人化 | 院内責任者または外部支援 |
| 査定・返戻が繰り返される | 院内分析または外部のレセプト点検 |
実際の医療現場では、医療事務が1名で通常業務と請求業務を抱えた例がありました。この施設では、医師の点検協力と経験者の採用で負荷を改善しています。外部委託が常に必要とは限りません。医学的判断は医師、制度上の不明点は公式窓口へ戻すのが原則です。
まとめ|通知書・レセプト・根拠資料の確認から始める
レセプト再審査請求は、増減点通知書、対象レセプト、カルテ・算定根拠の照合から始めます。審査結果への異議申立てである再審査請求、レセプト取下げ、返戻レセプトの再請求の意味や業務内容を混同せず、実際の請求先と最新の提出方法を確認してください。再提出後は資料控えと結果を台帳へ残し、算定マスタや次月の点検へ反映します。院内での判断や期限管理が難しい場合は、患者の個人情報は伏せて、支払審査機関窓口またはレセプト運用支援へ相談しましょう。
