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勤務医の年収はいくら?年代・勤務先別の平均と収入の見直し方

2026年10月20日 ・ 濱村

「年収1,500万円」その内訳、即答できますか?

医師の年収を語る際、「平均額」だけで判断するのは非常に危険です。基本給が高いのか、それとも過酷な当直や外勤手当で膨らんでいるだけなのか——。内訳を正しく把握していなければ、ご自身のキャリアや働き方のリスクを見誤ることになりかねません。本記事では公的統計データを基に「年代別」「勤務先別」の平均給与を整理しました。当直・外勤手当まで含めた「本来の収入」を確認できる給与整理シートと仮想モデルケースを公開しています。データと照らし合わせながら「今の勤務条件が本当に妥当なのか」、収入と働き方を見直すポイントを検証してみましょう。

【結論】勤務医の平均年収はいくら?統計の見方

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、勤務医の平均年収換算額は約1,512万円(月額116万3,200円×12+年間賞与等116万4,100円)です。ただし、この数値を見る際は以下の点に注意が必要です。

  • 集計期間:月額給与(2025年6月時点)と賞与等(2024年1〜12月)の集計時期が異なるため、あくまで参考値です。
  • 対象者の範囲:民営事業所の常用労働者(短時間労働者を除く)が対象です。「常勤・非常勤」という呼び方とは一致しない場合があり、開業医の事業収入も含まれません。

年代別・勤務先別に見る勤務医の年収目安

比較する際はご自身に近い年齢階級と勤務先の区分を選びましょう。

【年代別】勤務医平均年収

年代別の平均年収は以下の通りです。

年齢階級別の年収換算額(万円)
年齢階級別の医師の年収換算額横軸は年齢階級、縦軸は年収換算額で0から2,000万円。20〜24歳:592.27万円。25〜29歳:757.16万円。30〜34歳:1,086.27万円。35〜39歳:1,469.74万円。40〜44歳:1,746.21万円。45〜49歳:1,703.40万円。50〜54歳:1,779.92万円。55〜59歳:1,889.16万円。60〜64歳:1,981.46万円。65〜69歳:1,818.91万円。70歳以上:1,589.56万円05001,0001,5002,000592.2720〜24歳757.1625〜29歳1,086.2730〜34歳1,469.7435〜39歳1,746.2140〜44歳1,703.4045〜49歳1,779.9250〜54歳1,889.1655〜59歳1,981.4660〜64歳1,818.9165〜69歳1,589.5670歳以上

出典:令和7年賃金構造基本統計調査・職種第5表。民営・一般労働者・医師・企業規模10人以上・産業計。月額×12+年間賞与等で算出。

(注)同一の医師を長期追跡した昇給データではなく、横断的な集計です。20代には研修医が含まれます。

【開設者別】一般病院の常勤勤務医年収

医療経済実態調査による病院の開設者別の平均給与(給料+賞与)は以下の通りで、全体で約1,485万円です。

開設者(運営主体)給料と賞与の年額合計
全体1,484.58万円
国立1,290.02万円
公立1,550.70万円
公的(日赤、済生会、厚生連等)1,382.53万円
社会保険関係法人(健康保険組合、共済組合等)非表示(原表「*」)
医療法人1,576.71万円
その他(社会福祉法人等)1,453.64万円
個人1,204.67万円

出典:第25回医療経済実態調査・一般病院・常勤の医師の表(23)(PDF316〜318頁)。病院長は医師とは別集計のため含まれません。

大学病院は同じ分類軸ではないため、大学病院単体の年収をこの表から読み取ることはできません。大学病院の募集条件確認時は勤務日数や当直・外勤等の扱いを個別に確認してください。

統計上の「企業規模」と「病床数」は別物

厚生労働省の賃金統計における「企業規模」は病床数ではなく、「運営法人全体で働く従業員数」を指します。運営法人全体の規模や個別の勤務条件も合わせて確認してください。


診療科・地域・男女別データを読む際の注意点

診療科や地域による年収の違いを比較する前に、まずは「そのデータがどのような条件のものか」を確認しましょう。同じ金額表記でも求人票の提示額、勤務先の支給実績、回答額等前提が異なれば単純に比較することはできません。

チェック項目確認内容
1.金額の種類求人票の「提示額」か、実際の「支給実績」か
2.集計対象勤務医のみか、開業医も含まれるか(サンプル数は十分か)
3.勤務条件勤務日数、当直の有無、外勤(アルバイト)が含まれているか

診療科別の「求人提示額」と「実際の支給額」は分けて考える

診療科別の「平均年収データ」の中には実際の給与ではなく「求人票に記載された金額(下限〜上限)の平均」を集計している資料(例:民間医局の診療科別集計)があります。求人票の金額はあくまで病院側が提示する「募集条件」に過ぎません。これを「勤務医が実際に受け取っている平均年収」と勘違いしてしまわないように気を付けましょう。

転科を考えるときは年収アップの条件(当直や外勤の有無等)に加えて指導医のもとで症例を積める「研修環境」が整っているかも確認します。診療科別の年収データが高くても、転科した際にすぐに同等の給与が保証されるわけではありません。

地域別の年収データは「勤務条件(日数・当直)」を揃えて比較する

地域別の平均年収(例:メディウェルの医師年収データ)には求人に基づく地域別の集計が掲載されていますが、これもあくまで求人上の提示額の平均です。勤務日数や当直回数の差が反映されている場合もあります。

候補地が絞られてきたら、「希望する勤務日数・当直回数」であらためて条件を照らし合わせましょう。年収の額面に加え、通勤時間や住居費などの生活コストも含めた総合的な比較がおすすめです。

男女別の年収は勤務時間や役職の条件と併せて読む

男女別の平均には差がありますが、理由は様々で、平均年齢、勤務形態・役職の違いによるものも考えられます。

性別年収換算額平均年齢
男性1,594.16万円47.2歳
女性1,274.53万円41.5歳

出典:令和7年賃金構造基本統計調査・職種第1表。民営・一般労働者・医師・企業規模10人以上・産業計。月額×12+年間賞与等で換算しています。


自身の収入を整理する「給与整理シート」

適正年収を把握するにはまず本務先と外勤先を分け、同じ期間の税引前給与を書き出すことが第一歩です。賞与や当直手当が総額に含まれている場合、それらを二重に計上しないよう注意してください。

年収を本務・賞与・当直・外勤に分けて記入する

給与明細、賞与明細、雇用条件通知書を手元に用意してください。金額が分からない欄は「0円」とせず、「不明」として残しておきます。

項目自身の額・条件記入時のポイント
本務先の給与総額(A)__万円__年1〜12月分、もしくは就労_か月分の税引前総額
(内数)本務先の賞与__万円/不明Aに含まれる場合は二重加算しない
(内数)本務先の当直・時間外手当__万円/不明Aに含まれる場合は二重加算しない(固定額と変動額を区別)
外勤先(B)の給与__万円Aと同じ期間のもの。Aに含まれていないか
外勤先(C)の給与__万円A・Bと重複が無いか確認
本務・外勤それぞれの勤務条件週_日、当直月_回実労働時間、通勤時間も記入
不明な項目の確認先担当者__/資料__何を確認するか項目を書く

年俸の提示額と、実際に支給された総額は別々に記録しましょう。契約の年俸に賞与が含まれている場合、賞与明細があっても二重に加算してはいけません。反対に賞与が年俸とは別支給であれば、実際の支給額を確認して総額へ反映させます。

また、途中入職や休職がある場合は実際に就労した月数も記録しておきましょう。半年分の給与をそのまま2倍にして計算すると、実際の年間収入を見誤る原因になります。年換算で計算してみる場合は「仮定」と明記し、賞与などの支給条件も分けて扱いましょう。

外勤込みの総年収と比較できる統計を選ぶ

記入後は知りたい内容に合わせて比較する項目を選びます。

知りたいこと適用欄・比較先注意点
自分の年間給与の合計本務A+外勤B+外勤C同じ期間のデータであり、重複がないことが条件
本務給与と病院の公表平均の違い本務Aと常勤医師の年額表年度・施設種別・勤務条件の違いを注記して参考比較とする
賃金統計と同じ式での目安2025年6月の現金給与×12+直近1年間(2024年等)の賞与自分の実年間収入とは異なる換算値になる
手当が提示額に含まれているか契約書および給与担当者への確認条件の範囲が揃うまで他データとの比較は保留する

この対応表は各給与データの定義をご自身の収入資料へ当てはめて整理するためのものです。統計などの集団平均との金額差だけで、個人の適正年収を安易に判定できるものではない点に注意してください。


年収を計算する 本務・賞与・当直・外勤

給与総額と内訳の関係を、以下の計算例で確認してみましょう。

以下の金額はすべて仮定の試算であり、実在する勤務医の事例や給与相場を示すものではありません。またすべての金額は「同一12か月間の税引前給与」としています。

【計算例1】本務年収1,200万円に含まれる賞与・当直手当

本務先の総額を1,200万円、外勤先の給与を200万円と仮定します。ここでは本務総額1,200万円の中に賞与100万円と当直等手当120万円が含まれているものとします。

仮定する給与金額合計するときの扱い
本務総額A1,200万円合計に入れる本体
Aのうち賞与100万円Aに含まれるため足さない
Aのうち当直等120万円Aに含まれるため足さない
別勤務先の外勤B200万円Aと重複しないため足す

正しい合計はA1,200+B200=1,400万円です。

もし、すでに含まれている賞与・当直を再び加えてしまうと、1,200+100+120+200=1,620万円になり、これは220万円を二重加算した過大計上になってしまいます。支給項目の名称が別であっても、すでに「総額の内側」にある手当は足さないよう注意が必要です。

【計算例2】外勤給与が変わる場合は年収差と勤務条件を分けて確認する

次に、本務先の給与総額が変わらず、外勤給与のみが200万円から100万円に減る場合を考えてみましょう。

比較項目仮定A仮定B
本務給与総額1,200万円1,200万円
外勤給与200万円100万円
年間給与合計1,400万円1,300万円
合計額の差基準100万円減

この試算から分かるのは給与合計の金額差(100万円減)だけです。外勤給与が半分(200万円→100万円)になったからといっても、勤務時間や負担も半分になるとは限りません。勤務日数、1回あたりの勤務時間、コマ単価をそれぞれ確認する必要があります。

実際に働き方を変える場合、本務の手当や賞与の支給条件に影響が出る可能性があります。「本務の条件が変わらないか」が確定していない段階で、上の計算をそのままご自身の転職・転科のシミュレーションに当てはめないよう注意しましょう。年収の差額を書く場合はその隣に「まだ確認できていない勤務条件」をあわせて書き出しておくのがおすすめです。


理想の働き方とキャリアを叶える4つの選択肢

年収を見直す際は希望する「収入水準」と「許容できる勤務負担」のバランスを整えるために次の4つの選択肢が考えられます。「現職での条件交渉」「外勤の調整」「転職」「開業」――どれを選ぶかによって、確認すべき資料や相談先が異なります。

以下はご自身の判断材料を整理するための確認表です。

選択肢収入について確認する資料給与以外に確認すること確認・相談先
現職での条件交渉(勤務継続)給与規程、更新条件、役職手当の規定当直・勤務日数、福利厚生、研修機会現職の人事・給与担当
外勤の調整外勤先の労働条件通知書、給与明細通勤時間、本務との日程調整、休息時間、本務先の兼業規程本務先と外勤先の担当者
転職労働条件通知書(年俸内訳)担当業務内容、勤務日数、福利厚生、教育機会採用担当者、仲介者
開業事業計画書、収支シミュレーション初期・ランニング設備費、人員体制、経営責任開業コンサルタント、税理士、金融機関等

勤務医の年収は現職の給与体系と転職条件から見直す

現職と転職候補は同じ確認表に記入すると違いが分かります。たとえば「希望年収(金額)」と「当直を減らしたい(勤務負担の軽減)」といった希望は別の項目として分けて整理しておくのがコツです。両方を同時に満たせるかどうかは勤務先の条件を確認してから判断しましょう。

また、役職への就任や専門医などの資格取得による増収を考える場合も、事前に給与規程との関係を確かめておきましょう。評価される明確な要件と実際の支給開始時期まで質問しておくことで、より現実的で具体的な比較が可能になります。

提示額が魅力的であっても、それが「賞与込み」なのか「別支給」なのかが分からない段階では一度判断を保留しましょう。また、口頭のみで説明された項目は労働条件通知書・契約書のどこに記載されているかを必ず確認してください。「金額」「対象期間」「条件」の3点が書類上で明確に揃ってから比較表のデータを更新しましょう。

外勤で年収を増やす前に「兼業条件」と「勤務負担」を確認する

厚生労働省の兼業Q&Aによると、雇用される形の兼業(外勤)は「本務先と外勤先の労働時間が通算」されます。診療に従事する勤務医には2024年4月から時間外・休日労働の上限規制が適用されています。外勤を増やす前に、「兼業規程」、「通算労働時間の申告方法」、「勤務間の休息時間」を確認しましょう。厚生労働省の宿日直許可FAQによると、労働時間規制の適用除外は「許可を受けた範囲の業務」に限られます。許可の範囲と実際の業務内容にズレがないかを、勤務先の労務担当者に確認しておきましょう。

勤務医と開業医の年収を比べるときは「費用」と「経営責任」も見る

勤務医の「給与」と、開業した医療機関の「損益差額」は全く異なる指標です。厚生労働省の利用上の注意では個人クリニックにおける損益差額には開設者(院長)の報酬に当たる部分だけでなく、設備の維持・改善に充てる内部資金(事業資金)も含まれています。

また、税務上の「事業所得」も、総収入から必要経費を差し引いた金額で、手取り額そのものではありません。医療法人化している場合も、個人が受け取る給与・役員報酬と、法人本体に残る利益は明確に分けて考える必要があります。

開業を選択肢に入れる場合は「生活に必要な額(個人の収入)」と「事業に残す資金」を比較表の別欄として整理しましょう。必要な設備投資や人員体制、経営責任のリスクを確認せず、損益差額の数字だけで単純な収入と判断しないことが大切です。


よくある質問

Q1.医師の「年収の中央値」は「平均」とどう違う?

「平均値」は全員の合計金額を人数で割った値、「中央値」は金額が高い順(または低い順)に並べた際に中央にくる値です。なお、最も人数の割合が多い収入帯(最頻値)とも意味が異なるため、区別して捉える必要があります。

今回確認した公的資料の中では全国の勤務医のみ対象とした「年収の中央値」は確認できませんでした。一方で民間の医師年収調査には中央値の公表があります。ただし、これらは特定の会員回答者が対象で、開業医なども含む調査です。前提条件を確認して参考にしましょう。

Q2.30代・40代になれば年収1,000万円を超える?

年齢階級別の平均値では30〜34歳で約1,086万円、40〜44歳は約1,746万円と1,000万円を超えていますが、これは全体の平均であり全員を保証するものではありません。勤務先や当直・外勤の割合によって個人差があります。

Q3.平均より年収が低いと感じたら、まず何を確認する?

最初に、比較している金額が「本務のみ」か「外勤込み」なのかを確認してください。次に、対象年、勤務日数、当直回数、役職手当の有無といった条件の違いを細かくチェックします。

条件が異なれば、単純な金額差だけでは評価できません。不明な点があれば、雇用契約書や人事担当者への確認から始めてみましょう。

Q4.年収の数値から月給や手取りは分かる?

年収の数字だけでは通常月の実際の月給や毎月の手取り額を割り出すことはできません。

実際の手取り額は毎月の給与明細にある「控除額」と「差引支給額」で確認できます。厚生年金保険料や健康保険料も、「標準報酬月額」や「標準賞与額」を基に計算されます。税や保険、その他の控除を確認せず、大まかな一律の手取り率を当てはめないようにしましょう。


【まとめ】条件を可視化し、あなたに合った最適な選択肢を見つけましょう

「平均年収」という数字だけに惑わされる必要はありません。

大切なのは「現在のご自身の正確な条件」を知り、「これからどんな働き方をしたいか」を整理することです。

1.不明な契約内容を1つ確認してみる

まずは雇用契約書や給与明細を開き、「本務先の年俸に賞与や当直手当が含まれているか」など不明な点を1つクリアにしてみましょう。

2.自分なりの優先順位や希望を決める

「年収を増やしたい」「当直を減らしてプライベートや休息を確保したい」「症例数を多く積みたい」など、今一番大切にしたい希望を明確にします。

3.前向きな一歩を踏み出す

現在の勤務条件を正しく把握できれば、現職での交渉、外勤の最適化、さらなる活躍を目指した転職や開業など、次のアクションが自然と見えてきます。

ご自身の専門性とスキルが正当に評価され、理想のワークライフバランスと納得のいく年収やキャリアにつながるよう、まずは身近な給与情報の整理から始めてみましょう。