開業医の年収はいくら?勤務医・診療科別の比較と手取りの考え方を解説
2026年10月20日 ・ 下地
「いつかは開業したい」「でも開業医と勤務医どちらが稼げるだろう」と思ったことありませんか?多くの開業医が「高収入」というイメージを持たれている一方で、経営リスクや税金の負担など勤務医時代とは大きなお金の仕組みの違いがあります。
本記事では開業医の実際の平均年収をはじめ、勤務医や診療科別の比較、そして気になる「手取り」の考え方まで分かりやすく解説します。ご自身のキャリアプランを描くための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。
【結論】開業医の年収は指標を分けて確認
個人診療所の院長の年収は約2,649万円と推定されます(コロナ関連補助金を除外)。医療法人診療所の常勤院長給与は賞与込みで約2,898万円となります。
開業医の平均年収はいくら?勤務医との違い
開業医は病院で雇われているのではなくて、自身が経営しているクリニックの売上から必要経費を差し引いて残った利益をベースに個人の給与を決めています。そのため、開業医の平均年収を考える際は個人の損益と法人院長の給与を分ける必要があります。クリニックの収益は厚生労働省の「医療経済実態調査」にて報告されていますので、そのデータを元に院長先生の年収を推定することができます。
| 対象 | 指標名 | 年額の目安 |
|---|---|---|
| 個人診療所・全体 | 平均損益差額 | 約2,649万円 |
| 個人診療所・入院診療収益なし | 平均損益差額 | 約2,628万円 |
| 医療法人診療所・常勤院長 | 平均給料年額+賞与 | 約2,898万円 |
| 一般病院・常勤医師 | 平均給料年額+賞与 | 約1,485万円 |
出典:第25回報告・損益差額の平均値と中央値(冊子311頁)、診療所給与表(331頁)、病院給与表(314頁)。
個人診療所と法人診療所で異なる年収の金額
損益差額とは診療所の収益(売上金)から従業員の給与や光熱費、家賃、医薬品や医療材料費等の費用を差し引いた手元に残る金額のことです。残った金額には本人の給与報酬や医療設備への再投資等の原資金が含まれます。
法人院長の給与表には法人の開設者と院長先生を分けた区分がありませんので法人の利益を加えて「院長先生の年収」と考えないようにしましょう。
個人診療所全体の中央値は同条件で約2,079万円です。中央値とは値を順に並べたときの中央の値を指します。
勤務医と開業医の年収を比べるときの注意点
給与同士でも対象が違うため開業による増収額とは考えないように注意が必要です。法人院長は給料年額28,766,158円と賞与212,816円の合計です。病院の常勤医師は13,249,327円と1,596,457円の合計となります。
現在の給与と比較する場合、年収の差額だけでなく副業収入や勤務時間の条件、休暇や採用業務の負担も比較対象になります。
開業医の診療科別年収を同じ条件で比較
診療科別の開業医年収は同じ条件の損益額で比較する必要があります。
下記にグラフで整理しました。
診療科別の平均を同じ年度・開設主体・施設区分で比較
第25回・前年(度)・個人・集計2・入院診療収益なし。コロナ関連補助金を除く。
出典:第25回報告・主たる診療科別損益(冊子149〜151頁)。
「一番儲かる診療科」を平均値だけで判断できない理由
グラフで小児科の平均損益額が最も高くても開業する科の推奨順位にはなりません。なぜなら集計規模が異なり、「入院診療収益なし」には有床施設も含まれるからです。
同じ科でも各種検査や処置、人員配置によって必要な費用は違います。このグラフだけで科別差の原因や自院の所得金額までは特定できません。ご自身の標榜科を選択し患者数・医療設備・人事採用計画と合わせて検討してください。
開業医の年収と手取り・家計に残る資金の違い
「開業医の年収額=生活に必要な現金(生活費)」ではありません。利益、税務上の所得、実際の入出金(現金の動き)を分けて考える必要があります。
売上金・損益金額・院長先生給与・手取りの違い
売上金は医院が保険診療などで得る収益、手取り額は所得税等の税金を差し引いた最終的な金額です。個人開業医と医療法人では家計へのつながりが異なります。
下記に確認項目をまとめました。
| 確認する項目 | 個人開設の診療所院長先生 | 法人診療所の院長先生 |
|---|---|---|
| 医院の損益 | 開設者報酬や再投資等の原資金を含む | 法人の利益 院長先生の給与とは別 |
| 税務上の所得(税金) | 税務上のルールで計算 | 給与収入と給与所得を区別 |
| 返済・設備支出(経費) | 経費費用と生活費の金額を確認 | 法人の経費と院長先生の生活費は別々 |
| 生活費(現金) | 税金・保険や事業に残す資金も確認 | 給与からの控除や精算を確認 |
借入金返済と設備投資で使える資金
返済は元本(借入金額)と利息(上乗せされた金額)に分けて確認しましょう。国税庁では事業のための借入利息を必要経費として説明されています。一方、返済金の元本金は利益から賄う資金として別に確認が必要です。
設備費は購入時の支出と経費として計上される時期が異なる場合があります。減価償却とは原則として取得費を使用期間に配分する処理です。そのため国税庁の減価償却の説明に沿って現金支出と分けて確認します。
例えば、損益と通帳残高が違うときは返済明細と設備代金の支払日を確認します。同じ支払いに経費と現金支出の両方から重ねて引かないことも大切です。実際の手取り金額については家族構成や加入保険等でも変わるため税理士へ確認しましょう。
開業医の収入を大きく左右する患者数・単価・費用と改善点
開業医の収入を見直すときは売上・経費・入金を別々に確認します。改善したい数値を明確にすることで無駄に解決方法や時間を割かずに済みます。
患者数・診療単価・診療日数から収入の前提を確認
外来収益の概算は延べ患者数と患者1人当たりの診療単価にすることで分かりやすくなります。1日当たりの患者数を求める場合は診療日数も必要です。
次の表で計画の点検項目をまとめました。
| 要因 | 自院での確認点 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 患者数 | 延べ受診数、新患・再来、月ごとの変化 | 実患者数と延べ受診数を混ぜない |
| 診療単価 | 保険・自由診療、外来・訪問等の内訳 | 異なる診療構成に同じ単価を使わない |
| 診療日数 | 休診、季節変動、医師の勤務体制 | 繁忙月だけで年間を予測しない |
| 入金 | 診療月、請求月、支払予定月 | 売上と当月の入金を同一視しない |
人件費・設備費・家賃と診療体制のバランスを確認
費用は削減額だけでなく診療を続けるための体制とセットで判断します。
採用を増やす場合、給与に加えて求人募集費や教育中の負担(勉強会や研修等)も検討する必要があります。医療設備等は購入額だけでなく維持保守費、物件は家賃以外の契約費用も確認しましょう。
患者数が増えてもその分待ち時間や残業が増えれば勤務体制の見直しが必要です。収益の計画と同じ表に必要な職員数や診療時間を記録しておくと後で見返しやすくなります。
請求漏れ・返戻・未収・事務負担の改善効果を分けて確認
請求の改善額をそのままクリニックの利益や開業医の年収増加額として考えてはいけません。社会保険診療報酬支払基金の審査・支払業務の流れを例に次を分けて記録します。
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請求漏れ:要件を満たす未請求のレセプトを確認し最終的な支払額まで確認
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返戻:確認・修正のため支払機関から戻された請求(レセプト)は再請求後に確定金額の回収と遅延期間を確認
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査定:支払機関の審査による請求内容の修正、再審査も含めた確定額を確認
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未収:未回収の金額。入金待ちと回収不能を分けて管理
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事務負担:作業時間と追加の委託費・システム費を分けて記録
開業後の収入はどう変わる?公開事例で見る経緯と課題
開業後の増収と資金や人員の余裕は別に確認する必要があります。
以下は院長先生・支援者による公開取材の要約です。
| 医院・診療科 | 開業後の期間 | 公表された数値 | 課題・対応 |
|---|---|---|---|
| いしがみ整形外科クリニック/整形外科等 | 初年度〜4年目 | 医院売上6,000万円→4年目2.8億円 | 増患しても採用資金に苦労 来院理由と組織運営を見直し |
| ほーむけあクリニック/外来・入院・訪問診療 | 開業初期〜2年目。 | 当初は赤字との証言 | 2年目に離職が続き、採用前の見学や対話を見直し |
| なかつぼ眼科/眼科 | 2024年4月開業 | 患者数・収支額は未記載 | 集患に苦労したため広告や地域向けセミナーを継続 |
| おひさまクリニック/小児科等 | 2015年開業 | 日患者数は当初10数人〜平均30人ほど、2026年には平均約100人 | 増収するため診療科・診療時間・受入体制を拡大 |
| 渋谷いなもりクリニック/美容皮膚科・美容外科 | 開業2年未満で2025年6月移転。 | 初期家賃月20万円台、導入していた自動決済システム月3万円 | 患者増に応じ移転 |
売上や患者数が増えても人員と資金の課題は残る
売上の推移を見るだけでは採用できるかどうかは判断できません。いしがみ整形外科の院長は売上増を公表する一方、採用資金の苦労も語っています。ほーむけあの院長への取材でも開業初期の赤字に加えて離職への対応が語られています。両例を比べると集患計画と人員計画を別々に作るだけでは不十分と考えられます。
自院では増患に合わせて採用時期や支払いが増える時期を確認しましょう。売上が増える月より人件費が出ていく場合その期間の資金も確認対象です。
開業後の期間と改善経緯を踏まえて計画を見直す
開業後の収入を比べる際は経過年数と診療体制を合わせることが必要です。約1年半時点のなかつぼ眼科と約11年経過したおひさまでは条件が異なります。後者の増患が特定の広告やサイト改修だけの効果とはいえません。
渋谷いなもりの院長への取材では患者増で手狭になり物件を見直した経緯が語られています。初期家賃だけを自院の開業費用の基準にはしないでください。事例から借りるのは金額の目標より見直す項目と時期です。自院の計画では患者数が伸びない場合と増患で人員が不足する場合を両方考えましょう。
開業を決める前に確認したい項目
以下は公庫の収支計画の確認項目と前述の事例を基に整理しました。
生活費・返済・事業資金の参考表
| 項目 | 条件 | 確認資料 | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 比較する平均 | 個人/法人、診療科:__ | 本記事の統計条件 | 税理士等 |
| 必要生活費 | 月__万円 | 家計の支払記録 | 家族・税理士 |
| 元本・利息の返済 | 月__万円/__万円 | 返済予定表 | 借入先 |
| 設備更新・採用 | 支払月__、金額__ | 見積書・採用計画 | 業者・採用担当 |
| 診療から入金まで | 入金予定月__ | 支払通知・予定表 | 請求担当 |
| 計画未達・休業時 | 継続費用__、資金残高__ | 月次資金表・契約書 | 税理士・借入先 |
診療報酬は診療月と入金月の時期が異なります。詳細は支払基金の支払予定と担当の国民健康保険団体連合会の支払予定を確認してください。年間の収支が合っていても支払いが集中する月(税金等の支払いや返済がある場合)は別に確認します。
診療時間・人事採用・休業時の負担を比較
収入の比較には希望する働き方を考える必要があります。診療時間以外に人事採用・教育・診療報酬請求確認へ使う時間を考えます。
クリニックを休業する場合は家賃など継続する支払いを契約書で確認しましょう。勤務医としての休暇や保障と比べると年収以外の違いも見えてきます。
計画と実績の差が出たら最初に患者数・単価・費用のどこが違うかを分けます。患者数が少ない場合と患者数は同じでも費用が高い場合では調べる資料も変わります。さらに利益は計画どおりでも支払機関からの入金が遅れている場合、診療報酬請求と回収の記録を確認しましょう。
このように差のある項目を絞ると相談時に必要な資料も明確になります。平均年収を目標額として置くだけでなく、自院の開業計画が成立する条件を確認していきましょう。
開業医の年収についてよくある質問
開業医の年収に関する数字はクリニックの損益か個人の所得(給与)かで答えが変わります。
開業医の年収の中央値・年齢別・地域別データはある?
個人診療所の損益中央値は平均値・中央値表で確認できますが院長先生個人の手取り金額の中央値ではありません。今回の調査では現在の開業医個人所得を比較する年齢別・地域別データ表は確認できませんでした。各施設の地域別損益や勤務医の年齢別給与を自院の目安として代わりに当てはめることはできません。
開業医で年収5,000万円・1億円は可能?
今回の資料だけでは個人の開業医年収として年収5,000万円・1億円が可能かは判断できません。一方で個人診療所の損益が高額な施設は階級別施設数表にあります。この表はクリニック全体の経営成績の分布を表にしたものです。
開業医はお金持ち?それとも損失が大きい?
年収だけで資産や生活の余裕までは判断できません。売上があっても人件費や設備費、借入金返済にも資金が必要です。一方でクリニックの規模だけで家計に残る額が小さいともいえません。生活の余裕を知りたいならまずは手取り金額と家計支出を確認しましょう。クリニック経営の余裕を知りたい場合は医院の利益と毎月資金を分けて見るのが出発点です。
まとめ|開業医の年収は条件を揃えて自分の計画に当てはめる
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個人診療所の院長先生の損益と法人院長先生の給与を区別
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診療科別の開業医年収は年度・施設区分・施設数も確認
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統計損益データをそのまま手取り金額や生活費として捉えない
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公開事例は売上金だけでなく人件費や設備費や資金についても合わせて考える
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自院の生活費・返済額・入金予定日を月ごとに確認