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クリニックの離職 Part 1:経営インパクトを理解する

2026年1月27日 ・ 濱村久美

現在、多くの産業で人材不足が重要課題となっており、医療機関も例外ではありません。「スタッフが定着しない」「人員不足で診療内容を縮小せざるを得ない」という声が後を絶ちません。

このクリニック離職シリーズではクリニックでの離職について、そのインパクト、主な原因、対策についてご説明します。

 

本稿はクリニックの離職シリーズのパート1になりますが、パート1をスキップしても読んでいただけるようになっております。

 

1. 医療業界の離職率データ

まず、令和6年度・医療業界の離職率についての参考データをご覧ください。


1-1. 「医療、福祉」業界全体の離職率

厚生労働省が2024年に公表した「令和6年雇用動向調査」によると、「医療、福祉」の産業全体の離職率は以下の通りです。

  • 一般労働者(正社員等):13.1%
  • パートタイム労働者:15.7%

この数字は、全産業平均(一般労働者11.6%、パートタイム労働者14.7%)と比べてやや高い水準にあります。

例えば、正規職員5名のクリニックで13.1%の離職率と言うと、約1年半に1名離職者が出るということになります。


1-2. 病院看護職員の離職率

日本看護協会の2024年調査による、病院に勤務する看護職員(正規雇用)に限った離職率です。こちらは「病院」が対象であり、診療所は含まれていません。

  • 看護職員全体:11.3%
  • 新卒看護職員:8.8%

 

1-3. 自院の離職率を計算してみましょう

自院での離職率が高いと感じている場合、実際に計算してみることをおすすめします。

厚生労働省の雇用動向調査で用いられている計算式は以下の通りです。


離職率 = 1年間の離職者数 ÷ 1月1日時点の常用労働者数 × 100(%)

 

2. クリニックの人材不足が引き起こす問題

少人数で運営されるクリニックでは、一人欠けることの影響が非常に大きくなります。例えば正規職員5名のクリニックで1名退職すると、20%の労働力が失われたことになります。

そして、その人材不足は以下の3つの側面で深刻な問題を引き起こします。


2-1. 患者さんへの影響

  • 待ち時間の増加:受付・会計スタッフが不足すると待ち時間が長くなり、患者満足度が低下します。
  • 医療安全リスクの上昇:業務負担増による疲労や注意力低下から、ミスやインシデントのリスクが高まります。
  • 評判・信頼の低下:余裕のない対応は患者離れや口コミでの悪評につながります。


2-2. 現職員への影響

  • 業務負担の増大:欠員分のカバーにより一人あたりの仕事量が増え、長時間労働や残業が増加します。
  • 人間関係の悪化:精神的な余裕がなくなり、スタッフ間の衝突や業務の押し付け合いが起こりやすくなります。
  • さらなる離職の誘発:環境悪化により残ったスタッフも退職を選択し、人材不足の悪循環が加速します。


2-3. 経営への影響

  • 収益の低下:患者満足度低下による来院数減少が収入減につながります。
  • 採用・教育コストの増大:高い離職率は採用広告費や研修コストを増加させます。
  • 診療の制限:人手不足により検査や処置の実施が困難になり、医療の質や地域貢献度が低下します。

 

まとめ

医療・福祉業界の離職率は全産業平均を上回っており、特に少人数で運営されるクリニックでは、1名の離職が経営全体に大きな影響を与えます。

人材不足は患者サービスの質低下、現職員の負担増による離職の連鎖、そして収益悪化という悪循環を生み出します。

Part 2では、「なぜスタッフは離職を選ぶのか」という原因を深掘りし、定着率向上のための具体策につなげていきます。